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革新機構の支援案、救済色濃く

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毎日新聞2016年1月29日 23時49分(最終更新 1月29日 23時49分)



    液晶復活、見通せず
 経営再建中のシャープに対する官民ファンドの産業革新機構の支援案は、シャープ本体に巨額の資金をつぎ込んで事業を立て直すという企業救済色の濃い内容だ。また、ジャパンディスプレイ(JDI)と将来的に統合して発足させる液晶事業の“日の丸連合”は、中韓勢との競争激化が見込まれるだけに、すんなりと成長路線に乗せられるか不透明だ。

     革新機構の投資対象は「新たな付加価値を創出する革新性を有する事業」と決められている。革新機構を所管する経済産業省の林幹雄経産相は29日の閣議後の記者会見で、液晶事業について「世界においても我が国は相当進んでいる。進んだ技術はどんどん伸ばしたい」と競争力の高さを強調した。
     しかし、経産省や革新機構の本音は「液晶技術が海外流出すればJDIの優位性が弱まる」(経産省幹部)という守りの姿勢。台湾の電子機器受託生産大手、鴻海(ホンハイ)精密工業への売却を阻止すべく、投資額を積み増したこともあって海外メディアからは日本市場の閉鎖性を批判する声もある。安倍政権が掲げる海外からの対日投資促進という方向性に逆行しているとの指摘もある。
     加えて革新機構は、白物家電業界の再編にも触手を伸ばそうとしている。経産省と歩調を合わせる形で、シャープと不正会計問題で業績不振に陥っている東芝の白物家電事業を統合するなどの検討を進めているとみられるが「2社が一緒にやる意味はなく、誰も評価しない」(アナリスト)と既に冷ややかな受け止めも多い。
     革新機構は「単なる救済ではない。成長にむすびつく提案だ」(幹部)と強調するが、支援案が機構の役割に合致しているかどうか厳しく問われそうだ。主力行やシャープも、機構の支援案を受け入れる場合には、金銭的なメリットの大きいはずの鴻海精密工業の提案より優位と考えた理由を自身の株主に説明しなければならず、難しい判断を迫られそうだ。【横山三加子】
    価格・技術、先行く韓国
     革新機構の提案通りに液晶事業の“日の丸連合”が実現しても課題は山積している。主な市場であるスマートフォン向けは競争による価格下落が激しいうえ、次世代の有機ELパネルでは、量産技術で韓国勢に先を越されているためだ。
     スマホは先進国で普及が進み、今後は発展途上国向けの低価格スマホの需要拡大頼みになりそう。このため、パネル価格への下落圧力が強まりそうだ。また、台湾や中国の企業が液晶パネル工場を新設する動きもあり、供給能力がさらに過剰になりかねない。
     高級スマホ向けの高価格パネルでも不安材料は多い。液晶から、発色がより鮮やかで薄型化が可能な有機ELへ切り替える動きが広がりつつあり、高級スマホで世界的に評価が高い米アップルも検討を始めているためだ。有機ELについては、韓国・サムスン電子が自社スマホに搭載し、他社のスマホ向けにも外販しており、日本勢は後れを取っている。
     JDIは18年に有機ELの量産を始める計画を発表したばかり。シャープは基本技術の開発は進んでいるが、投資難もあり「量産技術はない」(幹部)のが実情だ。シャープの独自液晶「IGZO(イグゾー)」は、有機ELパネルにも応用できる特徴があり、産業革新機構は国内液晶大手の技術を結集し起死回生を目指すが、韓国勢との競争を勝ち抜くハードルは高い。
     独禁法対策も急務だ。JDIとシャープの中小型液晶の世界シェアは、単純合計で3割超に上る。高成長が見込める自動車向けパネルのシェアが特に大きいなど、分野別でシェアを引き下げる必要がある。【宇都宮裕一】

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