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ビジネス
特集脳を活性化させたいオトナたちへNHK2018年6月22日 19時20分 幼児教室や学習塾、そろばん…。子どものころ通った方も多いと思います。日本の教育産業の市場規模は年間2.5兆円とも言われますが(民間の研究所調べ)、少子化で今後、縮小は避けられません。こうした中、子ども向けとして発展してきた学びの場を、高齢者向けにも広げようという動きが活発化しています。少子高齢化のフロントランナーとも言われる島根県で取材しました。(松江放送局記者 針本毅)
幼児教育の「七田式」が… 教室をのぞいてみると、「ももんが『が』、うさぎ『ぎ』、えのぐ『ぐ』…」。先生が、動物などの絵が書かれたカードを目まぐるしいスピードで次々とめくっています。
島根県江津市の幼児教育「七田式」の教室です。
熱心にカードを見つめているのは、2歳や3歳の子どもたち。視覚的な情報を素早く子どもたちに与えることで、脳を活性化させる狙いがあるといいます。
七田眞氏が40年前に故郷である江津市で創業した「七田式」。幼児教育への関心の高まりを追い風に、運営する教室は国内にとどまらず海外18の国と地域にまで拡大。現在は5万人近くが学んでいます。
ターゲットは高齢者 実は、こちらも七田式です。
3年前に開設した江津市のコミュニティセンターの教室には、週に1回、地元の65歳から93歳までのお年寄りおよそ30人が参加しています。
高齢者を対象とした事業も展開しているのです。出題されるのは、足し算クイズ、パズル、イラスト記憶など。難易度で言えば、子ども向けの教材のほうが難しいケースもあるそうですが、多彩な問題で参加者を飽きさせません。 例えば、A4用紙1枚300文字ほどの文章の中に「か・き・く・け・こ」の文字がいくつ使われているのかを数え上げる問題。40代の私も挑戦してみましたが、意外に見落としが多く、すぐに正解にたどりつくことはできませんでした。適度な難易度の問題を繰り返し解くことで、情報把握力と集中力が鍛えられるということです。
関心は“認知症予防”受講料は、月2500円程度。生徒には、なんと週5日分の宿題も出されます。教室に通う理由を聞いてみると、「最近、物忘れが目立ってきたから」とか、「認知症が気になるようになって」…
やはり認知症予防への関心は高いようです。
認知症予防の効果を明確に実証するのは難しい作業ですが、「七田式」では、教材を解くことが高齢者の脳にどのような効果をもたらすか、正確に把握するため、大学と協力し研究を進めている最中です。 しちだ・教育研究所の牛尾巧さんは「現在65歳以上の高齢者は約3500万人で、潜在的なマーケットとして非常に大きい。長年、幼児教育の分野で蓄積してきた教材作りや指導方法のノウハウを生かして、高齢者の分野で販路拡大を目指していきたい」と話しています。
現在は江津市など一部の地域に限られている高齢者向けの教室を、今後は全国に展開していくことを視野に入れています。
子ども向けの教室は、七田式専属の先生が指導しますが、高齢者の講座は、公民館や福祉施設で地元の人や施設の職員が指導者を務めることでコストを抑える方法が検討されているということです。
こうした事業には、ライバルの「公文式」なども進出しています。
自治体や高齢者施設が開く健康教室で授業を行ったり、在宅で学習できるサービスを始めたりしていて、今後、競争は激しくなりそうです。
そろばん業界もそろばん教室でも、高齢者に来てもらおうという動きが始まっています。
島根県奥出雲町。江戸時代からそろばんの生産が盛んで、今も全国有数の生産量を誇ります。「雲州そろばん」の名前で知られ、町のあちこちにそろばん教室があります。
しかし、近年は少子化によって、そろばんの需要そのもの、そして教室に通う子どもたちの減少に歯止めがかかりません。そこで、そろばんの製造会社やそろばん教室の運営者などが立ち上がり、3年前に、高齢者専門の講座「おとなのそろばん教室」を開いたのです。
子どもの教室とは違う工夫週に1度開かれる、高齢者向けの教室には、今は60代から80代を中心に、20人程度の生徒が通っています。中には、ほぼ初心者からスタートして、今では13桁、つまり「兆」の単位の計算ができるようになった人もいて、町でも評判となっています。
講座を開くにあたっては、子ども向けの教室とは異なる工夫をしました。子どもの場合は、競いあったり昇級を目指したりして上達する傾向が強いですが、高齢者の場合は、自分のペースで楽しんで学ぶことが継続につながるそうです。 そのため、高齢者向けには、クイズの要素も織りこんだオリジナルのテキストを制作。講座の合間には、ティータイムも設けました。認知症予防の効果を期待する高齢者を呼び込むだけでなく、そろばんを趣味の1つとして定着させ、多くの高齢者が集まるきっかけにしようというのです。 「おとなのそろばん教室」の指導者、佐伯とも美さんは「グラウンドゴルフだったり、百人一首だったり、全国に数多くあるサークル活動の1つに、そろばんを選んでもらいたいです。午前中にはお年寄り向けに、夕方には子ども向けにと、教室を開くことができるようになれば、そろばん教室の活性化につながります」と話しています。
こうした高齢者を対象にしたそろばん教室は、奥出雲町だけでなく、東京や大阪など各地で広がり始めています。
もう1度通いますか? 少子化によるマーケットの縮小という危機に直面する教育産業。
ただ、“人生100年時代”とも言われる中、体も頭も、いつまでも元気でいたいという高齢者は増えています。
今回、取材した高齢者の皆さんは、問題に正しく答えられると心からうれしそうな笑顔を見せていました。頭を使う楽しさは、実は年齢にあまり関係がないのかもしれません。
高齢者に限らずオトナたちが、子どもの頃、通った教室で再び学ぶことが珍しくない時代がくるかもしれない… 学びの場が広がる可能性を感じた取材でした。
松江放送局記者針本 毅
来源: 脳を活性化させたいオトナたちへ |